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私は母親似で、ちょっと受け口気味なのが嫌で歯列矯正までしたのですが、弟は誰に似たのか受け口でもなければ、かなり美形で子どもの頃からモテていました。バレンタインデーはチョコレートの山でしたし、中学生くらいからいつも彼女という存在の女性が側にいました。私は一生懸命勉強して、それなりの大学に進み、就職先も頑張って探しましたが、弟はスポーツが得意でも、勉強が得意でもなかったけれど、顔の良さと愛想の良さ。そして女性に対する応対のうまさで、卒業後は必然的にホストに。誰もが納得する進路でした。

弟は天性のひとたらし、女たらしで、お客さんの心を次々と虜にしていきました。そのうちのお気に入りを彼女にして、お客さんにも彼女にも貢がせるのですが、そんな恋愛関係は長く続くはずがありません。最後は結局弟がフラれるわけですが、実は弟は全く傷ついていないという。彼女にフラれて貢いでもらえなくなったら、次のお客さんを彼女に格上げするだけでいいのです。だから弟の部屋には、元カノの数だけ金庫があるのです。

あ、なぜ元カノの数だけ金庫があるのかと言うと、弟は付き合って最初の自分の誕生日には、必ず彼女に金庫をねだるのだそうです。この金庫に2人の将来のためにお金を貯める。そういうと彼女は喜んで、金庫を買ってプレゼントしてくれ、その後も色々貢いでくれると言います。そして彼女と別れる時は、金庫について言及された時だけ、金庫の中身を持って行けというのではなく、金庫ごと持って行けというのだそうです。金庫は男性2人がかりでも運ぶのが大変なほど重いものです。女性が一人で持ち出せるわけもなく、泣く泣く諦めていくそうです。

それだけ聞いても非道な奴だと思い、人間性を理解できませんが、そもそもなぜ、毎回彼女に新しい金庫をせびるのか。金庫が増えると場所もとるし、同じ金庫を使いまわせばいいと思うのですが、弟のこだわりには全く理解できません。