子どもが幼稚園の学芸会のようなイベントで、将来なりたい職業について、絵と言葉を使って描いていた。子どもの将来なりたい職業。それは、聴診器で金庫をあけるカギ屋さんだという。金庫を開けるカギ屋さんというのはわかるのだが、聴診器を使うという具体的な手法を限定しているのが、うちの子どもらしい。きっとテレビドラマかアニメでそんなシーンを見たのだろう。親の私ですら、そんな業師を見たことがないのだが。
そもそも金庫ですら、うちの子は見たことがないのではないだろうか。そう。うちには金庫はない。結婚する時父親に、家具などの他に金庫も買ってやろうと言われたのだが、私が断ったのだ。金庫は大きさの割に収納力が少なすぎるし、結婚したばかりの頃は、金庫にしまうほど大切なものなんて特になかった。今は子どもも生まれ、子どものために入った学資保険や、私たち夫婦それぞれの医療保険の保険証券などがあるから、泥棒対策と言うより、火災の対策として、金庫を購入してはどうかと思わないではないが、とりあえず今までは金庫を持たずに今日まで来てしまった。改めて考えてみると、周りの友達たちに、金庫を持っているかどうか聞いたこともなかったが、よその家では普通に、重くてあまり中に物を入れられない金庫があるのだろうか。結婚する際の花嫁道具として、金庫を買ってもらうのは一般的だったのだろうか。
うちの子どもが金庫を開けるカギ屋さんになりたいと考えたのは、テレビかアニメで見たその人が格好良かっただけかもしれないが、もしかしたら子どもは、金庫はお金が一杯入っていて、それをあけるカギ屋さんは、お金が沢山もらえると考えたからではないだろうか。しかしそれなら、彼は金庫を開けたらがっかりするだろう。家庭の金庫に入っているのはおそらく現金ではなく、保険証券や少しの貴金属類の方がきっと多いからだ。